■ 助動詞「たい・たがる」
(1) 意味
希望 … ある動作をしたいという気持ち。
「たい」は話し手の希望を、「たがる」は話し手以外の希望を表す。
(例) わたしは飲みたい。
(例) あなたは飲みたがる。
(2) 活用
たい :形容詞型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
たかろ |
たかっ たく |
たい | たい | たけれ | ○ |
たがる:動詞(五段活用)型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
たがら |
たがり たがっ |
たがる | たがる | たがれ | ○ |
(3) 接続
「たい・たがる」は、動詞や助動詞「せる・させる・れる・られる」の連用形に接続する。
(例) 見たい / 見たがる
(例) 会わせたい / 会わせたがる
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助動詞「たい・たがる」の意味・活用・接続を見ていきます。
「たい」と「たがる」は、どちらも意味と接続のしかたが同じですが、活用のしかたが違います。
まずは、次の二つの例文を見てください。
わたしは、コーヒーを 飲みたい。
あなたは、コーヒーを 飲みたがる。
「飲みたい」も「飲みたがる」も、「飲む」という動作をしたい・望むという気持ち、すなわち希望を表しています。
「たい」「たがる」は、どちらも希望を表す助動詞です。
ただ、二つの例文を見比べると、「たい」と「たがる」とで微妙な意味のちがいがあります。
「飲みたい」の場合には「わたし」(話し手・自分)が飲むことを望んでいるという意味を表しているのに対して、「飲みたがる」の場合には「あなた」(話し手ではない人)が飲むことを望んでいるという意味を表しています。
このように、「たい」は話し手(自分)の希望を表すのに対して、「たがる」は話し手以外の希望を表すという違いがあります。
「たい」「たがる」がそれぞれどのように活用するのかを見ていきましょう。
(1) 「たい」の活用
まずは「たい」の活用からです。
例として、「遊びたい」という語を活用させてみます。
【遊びたい】
→遊びたかろう
→遊びたかった
→遊びたくなる
→遊びたい。
→遊びたいとき
→遊びたければ
この赤字の部分だけを抜き出して、「たい」の活用表をつくってみましょう。
【表】「たい」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
たい | たかろ |
たかっ たく |
たい | たい | たけれ | ○ |
続くことば | ウ |
タ ナル |
(言い切る) |
トキ | バ |
★スマートフォンの方は、横にスクロールさせてください。
これは、形容詞の活用のしかたと同じです。
「たい」は、形容詞型の活用をする助動詞です。ただし、形容詞とちがって、語幹と活用語尾の区別はありません。
形容詞の活用のしかたを覚えておけば、「たい」の活用は形容詞型であると覚えておくだけで足ります。
(形容詞の活用については、「形容詞(2)活用」のページを参照してください。)
(2) 「たがる」の活用
次に、「たがる」の活用です。
例として、「遊びたがる」を活用させてみましょう。
【遊びたがる】
→遊びたがらない
→遊びたがります
→遊びたがった
→遊びたがる。
→遊びたがるとき
→遊びたがれば
この例の赤字部分だけを抜き出して活用表の形にまとめると、次のようになります。
【表】「たがる」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
たがる | たがら |
たがり たがっ |
たがる | たがる | たがれ | ○ |
続くことば | ナイ |
マス タ |
(言い切る) |
トキ | バ |
★スマートフォンの方は、横にスクロールさせてください。
この活用表を見ると、「たがる」の活用のしかたは動詞の五段活用に似ています。
未然形が一つだけであることと命令形がないことを除けば、ほかの部分は動詞の五段活用と同じです。
上の活用表の未然形に「たがろ」を、命令形に「たがれ」をつけ加えると、動詞の五段活用とまったく同じになります。
そちらのほうを「たがる」の活用とする考え方もあります。
このように、「たがる」は、動詞(五段活用)型の活用をする助動詞です。ただし、動詞とちがって、語幹と活用語尾の区別がありません。
(動詞の五段活用については、「動詞(4)五段活用・音便」のページを参照してください。)
「たい・たがる」という助動詞がどのような語のあとに続くのかをしらべてみましょう。
まずは次の例を見てください。
遊び たい / 遊び たがる (五段)
見 たい / 見 たがる (上一段)
食べ たい / 食べ たがる (下一段)
来 たい / 来 たがる (カ変)
旅行し たい / 旅行し たがる(サ変)
この例の赤字部分は、すべて動詞の連用形です。
このように、「たい」と「たがる」はどちらも動詞の連用形に付く助動詞です。動詞であれば、どの活用の種類にも付きます。
*
別の例を見てみましょう。
会わ せ たい / 会わ せ たがる
寝 させ たい / 寝 させ たがる
思わ れ たい / 思わ れ たがる
ほめ られ たい / ほめ られ たがる
この例の赤字部分は、助動詞「せる・させる・れる・られる」の連用形です。
このように、「たい」と「たがる」は助動詞「せる・させる・れる・られる」の連用形にも付きます。
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次の各文中の( )に、(ア)「たい」と(イ)「たがる」のどちらかが当てはまるかを記号で答えなさい。
(1) 猫が魚を食べ( )。
(2) 私も、あなたのように成功し( )。
(3) 子どもが遊びに行き( )。
(4) 一度でよいから、月に行ってみ( )。
【考え方】
「たい」も「たがる」も希望を表す助動詞ですが、「たい」は自分(話し手)の希望を表し、「たがる」は他人(話し手以外のもの)の希望を表すという違いがあります。
そこで、問題の各文についてそれぞれの主語はなにかを考えると、どちらを当てはめればよいかがわかります。
(1)と(3)の文は、それぞれ主語が「猫が」「子どもが」です。いずれも話し手以外のものですから、それぞれの文末のかっこには「たがる」が当てはまります。
(2)の文の主語は、「私も」です。
(4)の文は主語がありませんが、文の意味から判断して話し手が主体であると考えることができます。
したがって、(2)および(4)の文末のかっこには「たい」が当てはまります。
【答】
(1) イ
(2) ア
(3) イ
(4) ア
*
次の各文中の下線部は、希望の助動詞である。それぞれの活用形を答えなさい。
(1) 子どもが勉強したがらない。
(2) 食べたくないなら、残してもよい。
(3) 自慢したがる人の気持ちが理解できません。
(4) ついて来たければ、ついて来なさい。
【考え方】
「たい」は形容詞型の活用、「たがる」は動詞(五段活用)型の活用をします。
それを知ったうえで、すぐあとに続く語からどの活用形であるかを考えましょう。
(1)も(2)も、それぞれ「たがら」「たく」の直後に「ない」が来ていることに注目してください。
「たがる」は動詞型活用をするので、(1)の「たがら(ない)」は未然形です。
一方、「たい」は形容詞型活用をするので、(2)の「たく(ない)」は連用形です。
「ない」は、動詞であればその未然形に、形容詞であればその連用形に付くということを覚えておくとよいでしょう。
(3)の「たがる」は体言(人)が続くので連体形、(4)の「たけれ」は「ば」が続くので仮定形です。
【答】
(1) 未然形
(2) 連用形
(3) 連体形
(4) 仮定形
**
次の各文中の下線部が助動詞であるものを選び、番号で答えなさい。
① ベットの上で眠りたい。
② 本を読むと、眠たい。
③ 彼女は、眠たがっていた。
④ あんなに寝ても、まだ眠りたがる。
【考え方】
助動詞の「たい」「たがる」とまぎらわしい語を見分ける問題です。
助動詞の「たい」「たがる」とそうでない語との見分け方ですが、「たい」「たがる」を「ます」に置きかえても文が成り立つのであれば助動詞、そうでなければ助動詞ではありません。
①と④の文は、それぞれ下線部の「たい」「たがる」を「ます」に置きかえても文が成り立つ(ただし、意味はちがいます)ので、下線部は助動詞です。
これに対して、②と③の文の「たい」「たがっ」は、「ます」に置きかえることができないので、助動詞ではありません。
実は、「眠たい」で一語の形容詞、「眠たがる」で一語の動詞です。
それぞれ「眠りたい」「眠りたがる」と意味は同じですが、文法的には区別されるので注意してください。
【答】
①、④