■ 助動詞「だ」
(1) 意味
断定 … はっきりそうであると判断する。
(例) あれは秋田犬だ。
(2) 活用
形容動詞型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
だろ |
だっ で |
だ | (な) | なら | ○ |
※ 連体形「な」は、助詞「の・ので・のに」だけが付く。
(3) 接続
「だ」は、体言や一部の助詞に付く。
(例) 真実だ 僕のだ
未然形「だろ」・連用形「で」・仮定形「なら」は、動詞・形容詞・一部の助動詞の終止形にも付く。
(例) 起きるだろう 暑いであろう 知らせるなら
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助動詞「だ」の意味・活用・接続を見ていきましょう。
次の例文を見てください。
あれは 秋田犬だ。
「秋田犬だ」という言い方は、その犬が他の種類の犬ではなく、はっきり秋田犬であると判断することを表しています。たしかにそうであるといった意味です。
話し手がはっきりそうであると判断することを断定といいます。「だ」は、断定の意味をもつ助動詞です。
ちなみに、話し手がはっきりと判断しないときにはどのような表現になるでしょうか。
その場合には、「秋田犬だろう」「秋田犬のようだ」「秋田犬らしい」といった、推量または推定の助動詞を用いた表現になります。
「だ」は、どのように活用するのでしょうか。
次の例を見てみましょう。
【真実だ】
→真実だろう
→真実だった
→真実である
→真実だ。
→真実なので
→真実なら(ば)
この例の赤字の部分だけを抜き出して、「だ」の活用表をつくってみましょう。
【表】「だ」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
だ | だろ |
だっ で |
だ | (な) | なら | ○ |
続くことば | ウ |
タ アル |
(言い切る) |
ノデ | (バ) |
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この活用のしかたは、形容動詞の活用のしかたとほぼ同じです。ただし、連用形が「だっ」と「で」の二つしかないところが形容動詞とちがいます。
このように、「だ」は、形容動詞型の活用をする助動詞です。ただし、形容動詞とちがって、語幹と活用語尾の区別がありません。
形容動詞の活用のしかたを知っていれば、「だ」の活用表を丸暗記する必要はありません。「だ」は形容動詞型の活用をする助動詞であると覚えておきましょう。
*
「だ」の活用表について注意点が二つあります。
上の活用表をよく見ると、連体形の「な」が丸かっこで囲んであります。
これは、連体形の「な」が用いられるのは、助詞の「の・ので・のに」が続く場合だけにかぎられるという意味です。
つまり、「だ」の連体形「な」に体言(名詞)を続けることはできません。
たとえば、次のように言うことはできますが、「学生な人」という言い方はできません。
学生なのは、いまだけだ。
学生なのに、働いて いる。
学生なので、毎日 勉強して いる。
また、活用表の仮定形ではバを丸かっこで囲んであります。
これは、仮定形の「なら」は、「ば」を付けてもよいし、「ば」を付けずにそのままの形で用いてもよいという意味です。
「だ」という助動詞がどのような語のあとに続くのかをしらべてみましょう。
「だ」の接続は、ほかの助動詞とくらべて少し複雑です。
(1) 「だ」のすべての活用形の接続
次の例を見てください。
真実 だ
僕 の だ
上の例の赤字部分は、体言(名詞)と助詞「の」です。「だ」は、「の」のほかにも、「から・だけ・ばかり」など、さまざまな助詞に付きます。
このように、「だ」は、体言および一部の助詞に付きます。
このことは、「だ」のすべての活用形について言えます。
(2) 「だろ・で・なら」だけの接続
「だ」には、特定の活用形だけがする接続のしかたもあります。
次の例を見てください。
起きる だろ う
起きる で あろ う
起きる なら(ば)
暑い だろ う
暑い で あろ う
暑い なら(ば)
知ら せる だろ う
知ら せる で あろ う
知ら せる なら(ば)
赤字部分の「起きる」「暑い」「せる」は、それぞれ動詞・形容詞・助動詞の終止形です。
このように、「だ」の活用形のうち、未然形「だろ」・連用形「で」・仮定形「なら」は、動詞・形容詞・一部の助動詞の終止形にも付きます。
ただし、連用形「で」がこのような接続をするのは、例のように、「で」のあとに「あろう」が続く場合にかぎられます。
助動詞については、「せる」のほかに、「させる・れる・られる・たがる・ない・たい・ぬ(ん)・た(だ)」の終止形に付くこともできます。
仮定形「なら」だけは、助動詞「ます」の終止形にも付きます。
・し ます なら
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次の各文中の( )の中に助動詞「だ」を活用させて入れなさい。
(1) 一番近い駅はどこ( )うか。
(2) 人間は考える葦( )ある。
(3) 雨( )ので、傘を持っていきなさい。
(4) コンビニに行く( )、アイスを買ってきて。
【考え方】
助動詞「だ」は、形容動詞型の活用をします。したがって、形容動詞の活用を覚えていれば、「だ」の活用形もわかります。
「だろ―う」「だっ―た」「で―ある」…というように、活用形とそれに続くことばを頭の中で思い出しましょう。
(1)は、( )の直後に「う」がくるので、未然形「だろ」が入ります。
(2)は、( )の直後に「ある」がくるので、連用形「で」が入ります。
(3)は、( )の直後に「ので」がくるので、連体形「な」が入ります。
連体形の「な」は、助詞「の・ので・のに」にしか付かないことに注意してください。
(4)は、( )の直後でいったん文が切れているので、連用形「で」か仮定形「なら」のどちらかが入ります。
ここでは、文全体の意味から「なら」が入るとわかります。
【答】
(1) だろ
(2) で
(3) な
(4) なら
*
次の①から④の文のうち、下線部が助動詞「だ」であるものを番号で答えなさい。
① ネコがぼくの指をかんだ。
② 先生のアドバイスは、いつも的確だった。
③ お見舞いに行ったら、元気そうだった。
④ 今夜、雨は雪にかわるだろう。
【考え方】
「だ」の品詞を見分ける問題です。
「だ」は、断定の助動詞だけではありません。形容動詞の活用語尾(「きれいだ」の「だ」)や助動詞「た(だ)」「そうだ」「ようだ」も、部分的に「だ」の形をしています。
このように、「だ」は、品詞の区別がまぎらわしいことばの一つです。
①の「だ」は、動詞の音便の形についています。動詞の音便に付くのは、過去・完了の助動詞「た(だ)」です。
②の「的確だ」は、体言(名詞)に断定の助動詞「だ」が付いた形なのか、形容動詞なのか迷いやすいと思います。
ここで、断定の助動詞「だ」の連体形「な」には体言が続かないことを思い出してください。「だ」を「な」に置きかえて体言を続けることができるのは、形容動詞です。
「的確だ」は、「だ」を「な」に変えて適当な体言(たとえば「アドバイス」)を続けること(「的確なアドバイス」)ができるので、形容動詞です。
③の「元気そうだ」も、②と同じように、「だ」を「な」に置きかえて体言を続けること(「元気そうな人」)ができるので、断定の助動詞「だ」ではありません。
この場合は、助動詞「そうだ」です。
④の「だろ(う)」は、直前の語が動詞であることに注目してください。
断定の助動詞「だ」の未然形「だろ」が動詞の終止形にも付くことを知っていれば、下線部が断定の助動詞「だ」であることがわかります。
【答】
④