■ 状態の副詞
状態の副詞……動作・作用の状態を表す副詞。主に動詞を修飾する。
(例) しばらく待つ ゆっくり(と)開く
■ 程度の副詞
程度の副詞……ある状態の程度を表す副詞。用言のほかに、体言(名詞)や他の副詞をも修飾する。
(例) だいぶ歩く とてもやさしい 少し変だ
(例) 少し前に座る。 もう少し食べたい。
■ 呼応の副詞
呼応の副詞……それを受ける文節が決まった言い方になる副詞。
(例) 決してあきらめない。
(例) おそらく中止だろう。
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副詞は、状態の副詞、程度の副詞、呼応の副詞の3種類に分けることができます。
それぞれの種類を順に見ていきましょう。
次の例を見てください。
しばらく 待つ
ゆっくり(と)開く
すぐ(に)閉じる
ふと 思い出す
いきなり 立ち上がる
ときどき 不安になる
しっかり(と)覚える
上の例の赤字の語は、すべて副詞です。
それぞれ、後ろの語(動詞)を修飾して、動作や作用がどのような状態(ありさま・ようす・しかた)であるかを表しています。
このように、動作・作用の状態を表す副詞を状態の副詞といいます。
上の例のように、状態の副詞は、主に動詞を修飾します。
次の例のように、状態の副詞のなかには、「の」(助詞)をともなって名詞を修飾するものもあります。
・かつて の 栄光
・もっぱら の うわさ
・また の 機会
状態の副詞には、次のような語もふくまれます。
・雷が ゴロゴロ 鳴る。
・犬が ワンワン ほえる。
・赤ちゃんが にっこり 笑う。
・道が くねくね 曲がる。
「ゴロゴロ」「ワンワン」は、それぞれ何かの物音や生きものの鳴き声をまねて表したものです。このような語を擬声語または擬音語と呼びます。
また、「にっこり」「くねくね」は、物事のようすをそれらしい感じの言葉で表したものです。このような語を擬態語と呼びます。
擬声語・擬態語は、「ゴロゴロと」「にっこりと」などのように、その語尾に「と」が付くことがあります。その場合、「と」までをふくめて1語の副詞です。
次の例を見てください。
だいぶ 歩く
ちょっと 食べる
ひたすら 泳ぐ
とても やさしい
かなり 重い
もっとも 大きい
少し 変だ
たいへん 静かだ
上の例の赤字の語は、すべて副詞です。
それぞれ、後ろの語(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾して、その状態・性質がどの程度であるかを表しています。
このように、ある状態の程度を表す副詞を程度の副詞といいます。
*
上の例のように、程度の副詞は、主に用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾します。
ただし、それだけとはかぎらず、体言(名詞)やほかの副詞を修飾することもあります。
少し 前 の席に座る。(名詞を修飾)
もう 一度 試してみる。(名詞を修飾)
もう 少し 食べたい。(副詞を修飾)
次の例文を見てください。
決して 簡単に あきらめ ない 。
おそらく 明日は 雨だろ う 。
どうして 犬は 散歩したがるの か 。
もし 病気に なっ たら 、休もう。
上の例文の赤字の語は、すべて副詞であって、それぞれ話し手の態度(考え・気持ち)を表しています。
たとえば、「決して」という副詞は、強く打ち消す(否定する)ことを表します。
そして、「決して」を受ける文節(被修飾語)である「あきらめない」も、打ち消し(否定)の表現(言い方)になっています。
これは、「決して」という副詞が来るときは、それを受ける文節が打ち消しの表現になるように決まっているからです。
同じように、「おそらく」を受ける文節は推量の表現になり、「どうして」を受ける文節は疑問(反語)の表現、「もし」を受ける文節は仮定の表現になることが決まっています。
このように、それを受ける文節(被修飾語)にある決まった言い方を要求する副詞を呼応の副詞といいます。(陳述の副詞、または、叙述の副詞ともいいます。)
「呼応(する)」というのは、ある副詞が来たときに、ある決まった言い方・表現がそれと結びついて用いられるという意味です。
(修飾語と被修飾語の関係については、「文節の働き(2)修飾語」のページを参照してください。)
口語(現代語)では、文中に呼応の副詞があっても、かならずしもそれと呼応する言い方になるとはかぎりません。
・おそらく 明日は 雨だ。
*
次の表は、呼応の副詞と呼応のしかたの例をまとめたものです。
【表】さまざまな呼応の副詞
打ち消し (否定) |
決して 忘れ ない ちっとも わから ない 少しも 怖く ない めったに 驚きませ ん |
推量 |
おそらく 来る だろう たぶん 遅れる だろう きっと 大丈夫でしょ う |
疑問・反語 |
なぜ こうなったの か どうして 耐えられよう か |
仮定 |
もし 雨だっ たら 行かない たとえ 見 ても 話さない |
希望 |
どうぞ 聞いて ください どうか 聞いて ほしい ぜひ 聞き たい |
たとえ |
まるで 夢の ようだ ちょうど 石の ように 硬い |
打ち消し 推量 |
まさか 言わ ないだろう よもや 言う まい |
呼応の副詞については、それぞれの副詞と呼応する言い方も合わせて覚えるようにしましょう。
呼応の副詞は、「決して~ない」「おそらく~だろう」のように、それと呼応する言い方も合わせて覚える。
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次の各文中の下線部は副詞である。それぞれの副詞の種類を後から選び、記号で答えなさい。
(1) 雨の中をわざわざ出かけた。
(2) この話は、決して誰にも話さない。
(3) 暗闇からカサカサと音が聞こえる。
(4) 残された時間は、ごくわずかだ。
ア 状態の副詞
イ 程度の副詞
ウ 呼応の副詞
【考え方】
副詞の種類は、意味や修飾のしかたの違いによって見分けることができます。
(1)の「わざわざ」は、「出かけた」という動作の状態・ようすを表しているので、状態の副詞です。
(2)の「決して」は、それを受ける文節が否定の表現(~ない)になる副詞(呼応の副詞)です。(2)の文では、「決して」と「話さない」とが呼応しています。
(3)の「カサカサと」は、「聞こえる」という作用の状態を表しているので、状態の副詞です。音をそのとおりにまねています(擬声語)。
(4)の「ごく」は、「わずかだ」という動詞以外の語を修飾し、その状態の程度を表しています。つまり、程度の副詞です。
【答】
(1) ア
(2) ウ
(3) ア
(4) イ
*
次の各文中の( )に当てはまる語を後から選び、記号で答えなさい。
(1) 彼は、( )あんなに楽しそうなのか。
(2) ( )疑問に思っていません。
(3) このぐらいで( )怒らないだろう。
(4) ( )そこにお座りください。
ア まさか
イ どうぞ
ウ 少しも
エ どうして
【考え方】
それぞれ文末の表現に注目して、どのような副詞と呼応するかを考えましょう。
(1)の文の「楽しそうなのか」は、疑問を表しています。選択肢のうち、疑問の表現と呼応する副詞は、「どうして」です。
(2)の文の「思っていません」は、打ち消し(否定)を表しています。選択肢のうち、打ち消しの表現と呼応する副詞は、「少しも」です。
(3)の文の「怒らないだろう」は、打ち消し推量を表しています。選択肢のうち、打ち消し推量の表現と呼応する副詞は、「まさか」です。
(4)の文の「お座りください」は、希望を表しています。選択肢のうち、希望の表現と呼応する副詞は、「どうぞ」です。
【答】
(1) エ
(2) ウ
(3) ア
(4) イ
**
次の各文中の□に平仮名を一つずつ入れて、文を完成させなさい。
(1) この料理をぜひ食べて□□□□。
(2) まるで別世界の□□□美しさだ。
(3) たとえ結果が悪く□□、またがんばろう。
(4) まさか嘘だとは思わ□□□□□。
【考え方】
それぞれの文中に呼応の副詞が一つずつあり、□をふくむ部分と呼応します。
解説の表「さまざまな呼応の副詞」を参考にして、それぞれの副詞と呼応する表現のうち、□の個数と同じ文字数になるものを考えてみましょう。
(1)の文の「ぜひ」は、希望の表現と呼応します。ここでは、4文字の「ください」が当てはまります。
(2)の文の「まるで」は、たとえ(比況)の表現と呼応します。ここでは、直後の「美しさ」(名詞)を修飾する形(連体形)の「ような」が当てはまります。
(3)の文の「たとえ」は、仮定の表現と呼応します。ここでは、「ても」あるいは「とも」がうまく当てはまります。
(4)の文の「まさか」は、打ち消し推量の表現と呼応します。ここでは、5文字の「ないだろう」が当てはまります。
【答】
(1) ください
(2) ような
(3) ても(とも)
(4) ないだろう