■ 形容詞の活用
形容詞の活用のしかたは、1種類だけである。
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
―かろ |
―かっ ―く |
―い | ―い | ―けれ | 〇 |
(例) 美しかろウ・美しかっタ・美しくナル・美しい・美しいトキ・美しけれバ
形容詞には、命令形がない。
■ 形容詞の活用形の用法
形容詞の活用形は、文中での用法によって決まる。
① 未然形……「う」に連なる。
(例) 冬は、寒かろう。
② 連用形「―かっ」……「た」に連なる。
(例) 夏は、暑かった。
③ 連用形「―く」
……用言(「なる」「ない」など)に連なる。
(例) 練習が楽しくなる(ない)
……「て」「は」に連なる。
(例) 安くておいしい。 高くはない。
……中止法に用いる。
(例) 夏は暑く、冬は寒い。
④ 終止形……そこで文が終わる(言い切る)。
(例) 負けてくやしい。
⑤ 連体形……体言(「とき」など)に連なる。
(例) 故郷が恋しいときがある。
⑥ 仮定形……「ば」に連なる。
(例) 早ければ、間にあう。
■ 形容詞の語幹の用法
形容詞には、語幹だけの用法もある。
① 語幹で言い切る
(例) おお、寒(さむ)。
② 「そうだ」が続く
(例) 本当につらそうだ。
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形容詞は、活用がある単語です。➡動詞(2)活用とその種類
たとえば、形容詞の「美しい」と「よい」を活用させると、次のようになります。
美しかろ ウ (未然形)
美しかっ タ (連用形)
美しく ナル (連用形)
美しい 。 (終止形)
美しい トキ (連体形)
美しけれ バ (仮定形)
よかろ ウ (未然形)
よかっ タ (連用形)
よく ナル (連用形)
よい 。 (終止形)
よい トキ (連体形)
よけれ バ (仮定形)
〔太字=語幹、赤字=活用語尾〕
上の例を見ると、「美しい」と「よい」の活用語尾がどちらも「かろ・かっ・く・い・い・けれ」になっています。
このことは、すべての形容詞の活用語尾について当てはまります。
つまり、形容詞の活用のしかたは、1種類しかありません。
形容詞の活用を表にしてまとめると、次のようになります。
【表】形容詞の活用
★スマートフォンの方は、横にスクロールさせてください。
基本形 | 語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
美しい | 美し | ―かろ |
―かっ ―く |
―い | ―い | ―けれ | 〇 |
よ い | よ | ||||||
用法 | ウ |
タ |
言い切る |
トキ | バ | ― |
※ 命令形の欄の「〇」は、活用形がないことを表しています。
形容詞の活用は、活用語尾を声に出すなどして覚えるとよいでしょう。
*
形容詞の活用形は、未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形の五つです。形容詞に命令形はありません。
形容詞には命令形がないので、「しろ」「せよ」などを付けて命令の意味を表します。
・部屋を 明るく しろ。
五段動詞の連用形には音便(発音の変化)があることを学びましたが、形容詞の連用形にも音便が生じることがあります。➡動詞(4)五段活用・音便
・お暑く → お暑う ございます
・おめでたく → おめでとう ございます
・うれしく → うれしゅ う 存じます
上の例で、形容詞の連用形「―く」が「ございます」「存じます」に連なることによって、活用語尾が「う」に変化しています。これをウ音便といいます。
活用語尾だけでなく、語幹の一部も変化します。
ある形容詞が文中でどの活用形になるかは、文中での用いられ方(用法)によって決まります。
それぞれの活用形の主な用法は、次のとおりです。(なお、それぞれの活用形の用法は、ここで取り上げるものだけにかぎりません。)
(1) 未然形の用法
形容詞の未然形は、「う」に連なります。動詞と違って、「う」に連なる用法しかありません。➡「う・よう」
今年の 冬は、寒かろう。(「寒い」の未然形)
(2) 連用形「―かっ」の用法
形容詞の連用形には「―かっ」と「―く」の二つの形があり、それぞれ用法が違います。
「―かっ」の形の連用形は、「た」に連なります。➡「た(だ)」
今年の 夏は、暑かった。(「暑い」の連用形)
(3) 連用形「―く」の用法
「―く」の形の連用形は、「なる」(動詞)や「ない」(形容詞)のような用言に連なります。➡補助動詞・補助形容詞
また、「て」「は」にも連なります。
部活の 練習が 楽しく なる(ない)。(「楽しい」の連用形)
安くて おいしい。 高くは ない。(「安い」の連用形)
文をそこでいったん中止したあとでまた続けるときにも、連用形「―く」が用いられます。
このような連用形の用法を中止法といいます。
夏は 暑く、冬は 寒い。(「暑い」の連用形)
「ない」は、動詞の場合は未然形に、形容詞・形容動詞の場合は連用形に付きます。
動詞の未然形に付く「ない」は助動詞で、形容詞・形容動詞の連用形に付く「ない」は(補助)形容詞です。➡「ない」の識別
(4) 終止形の用法
形容詞の終止形は、そこで文が終わる(言い切る)ときに用います。
試合に 負けて くやしい。(「くやしい」の終止形)
終止形は、言い切りの形ともいい、単語の基本となる形(基本形)です。
形容詞の終止形には、助動詞や助詞に連なる用法もあります。
・明日は、暖かいそうだ。(「暖かい」の終止形)
・この店は、うまいと 評判だ。(「うまい」の終止形)
(5) 連体形の用法
形容詞の連体形は、「とき」などの体言(名詞)に連なります。
故郷が 恋しい ときが ある。(「恋しい」の連体形)
形容詞の連体形には、助動詞や助詞に連なる用法もあります。
・彼は、眠いようだ。(「眠い」の連体形)
・痛いのを 我慢する。(「痛い」の連体形)
(6) 仮定形の用法
形容詞の仮定形は、「ば」に連なります。➡主な接続助詞の用法
出発が 早ければ、間にあう。(「早い」の仮定形)
形容詞の活用形は、あとに続く語や符合によって見分ける。
・未然形「―かろ」……ウ
・連用形「―かっ」……タ
・連用形「―く」……ナル・ナイ・テ・ハ、または、テン(、)
・終止形「―い」……マル(。)
・連体形「―い」……トキ
・仮定形「―けれ」……バ
形容詞には、語幹だけの用法もあります。➡動詞(2)活用とその種類
(1) 語幹で言い切る
形容詞の語幹だけで言い切ることがあります。
おお、寒 。(「寒い」の語幹)
あっ、痛 。(「痛い」の語幹)
(2) 「そうだ」が続く
形容詞の語幹に助動詞の「そうだ」が続くことがあります。➡「そうだ」
本当に つらそうだ。(「つらい」の語幹)
形容詞の語幹に付くのは、様態の「そうだ」です。伝聞の「そうだ」は、形容詞の終止形に付きます。くわしくは、助動詞のページで学びます。➡「そうだ」
形容詞の語幹には、派生語や複合語をつくる働きがあります。➡複合語・派生語
・楽しさ おかしみ かなしげ (すべて派生語の名詞)
・安物 黒字 (複合名詞)
・近寄る 遠のく (複合動詞)
・青白い ずる賢い (複合形容詞)
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次の各文中の下線を引いた形容詞の活用形などを後から選び、記号で答えなさい。
(1) 一人で遊んでいても、楽しくない。
(2) その険しい山は、多くの登山家を苦しめた。
(3) よい結果でなくて、さぞ悔しかろう。
(4) この漫画は、面白そうだ。
ア 未然形
イ 連用形
ウ 連体形
エ 語幹
【アドバイス】
形容詞の活用形などを見分けるときは、その直後に注目します。
本文の解説を読んで、それぞれの活用形や語幹の主な用法を押さえておきましょう。
(1)と(3) 形容詞と動詞の未然形の用法の違いに注意してください。「う」に連なる用法は同じですが、「ない」に連なる用法は形容詞の未然形にはありません(連用形の用法です)。
(2) 形容詞は(動詞も)終止形と連体形が同じ形なので、その直後を見てどちらであるかを判断します。マル(。)なら終止形、体言なら連体形です。
(4) 形容詞の語幹の用法も押さえておきましょう。言い切る、または、助動詞「そうだ」に連なる用法があります。
(1) イ
(2) ウ
(3) ア
(4) エ
*
次の各文中の( )に、後の形容詞を適当な形に直して入れなさい。
(1) 事故現場は、( )空気に包まれていた。[重い]
(2) 風が( )ば、コートを着ていきなさい。[冷たい]
(3) 空模様が( )なり、まもなく雨が降りはじめた。[あやしい]
(4) 先生の考え方のほうが( )た。[正しい]
【アドバイス】
形容詞の活用形は、文中での用法、すなわち、あとに続く語や符合(テンやマル)によって決まります。カッコの直後に注目して、うまく当てはまる活用形を考えましょう。
(1) 「空気」は名詞(体言)なので、その直前には連体形がきます。形容詞は終止形と連体形が同じ形です。
(2) 「ば」は、活用語の仮定形に付く助詞です。
(3) 「なり(なる)」は動詞(用言)なので、その直前には連用形がきます。
形容詞の連用形には「―かっ」と「―く」の二つの形がありますが、用言に連なるのは「―く」のほうです。
(4) 「た」は、活用語の連用形に付く助動詞です。形容詞の場合、「—かっ」の形の連用形に付きます。
(1) 重い
(2) 冷たけれ
(3) あやしく
(4) 正しかっ