要点のまとめ
■ 「に」という語には、次のようなものがある。
① 形容動詞の活用語尾
「に」を「だ」や「な」に置きかえることができる(活用がある)。
〔風が さわやかに 吹く。→ さわやかだ〕
② 副詞の一部
「に」を「だ」や「な」に置きかえることができない(活用がない)。
〔ただちに 始める。→ すぐだ ✖〕
③ 助動詞「そうだ」「ようだ」の連用形の一部
「そうに」「ように」の形になっている。
〔おいしそうに 食べる。〕
〔雪のように 白い。〕
④ 格助詞「に」
体言につく。
〔庭に 花を 植える。〕
⑤ 接続助詞「のに」の一部
逆接をあらわす。
〔眠いのに、眠れない。〕
[スポンサードリンク]
「に」という語の識別のしかた(見分け方)について解説します。
次の例文を見てください。
【A】風が さわやかに 吹く。
【B】ただちに 始める。
【C】おいしそうに 食べる。
【D】庭に 花を 植える。
【E】眠いのに、眠れない。
各例文の下線部は、いずれも「に」という語を含んでいます。ただし、文法上の性質・種類はそれぞれちがっています。
(1) 形容動詞の活用語尾
例文Aの「に」は、形容動詞の連用形の活用語尾です。
形容動詞は、活用がある語で、「―だ」(終止形)や「―な」(連体形)などの形に変化させることができます。
例文Aの「さわやかに」も、「さわやかだ」や「さわやかな」のように、「に」を「だ」や「な」に置きかえることができます。
ちなみに、断定の助動詞「だ」には、形容動詞とちがって「に」という形の連用形はありません。
したがって、「に」の識別では、助動詞「だ」の可能性を考える必要はありません。
テクニック★助動詞「だ」と形容動詞の違い
① 連用形の「に」がない。
② 連体形「な」につくのは、助詞「の・のに・ので」だけである。
(2) 副詞の一部
例文Bの「に」は、副詞の一部です。
副詞のなかには、「すぐに」「ただちに」「ついに」などのように、「に」で終わる語があります。
副詞は活用しない語ですから、形容動詞のように、「に」を「だ」や「な」などに置きかえることができません。
例文Bの「ただちに」も、「ただちだ」や「ただちな」の形に変えることができません。
ただし、「すぐだ」という表現は間違いではありません。これは、「すぐ」という副詞に助動詞「だ」が接続したかたちです。
(3) 助動詞「そうだ」「ようだ」の連用形の一部
例文Cの「に」は、助動詞「そうだ」の連用形(「そうに」)の一部です。
「そうだ」と同じように、連用形が「に」で終わる助動詞に「ようだ」があります。
「そうに」「ように」は、その語の形によって助動詞であると判断することができます。
(4) 格助詞「に」
例文Dの「に」は、格助詞です。
格助詞の「に」は、主に体言につき、場所・時間などをあらわす連用修飾語になったり、並立語になったりします。
例文Dの「庭に」は、「植える」の文節にかかる連用修飾語であって、場所をあらわしています。
(5) 接続助詞「のに」の一部
例文Eの「に」は、接続助詞「のに」の一部です。
接続助詞の「のに」は、活用語(用言・助動詞)の連体形について逆接の関係(反対のことがらをつなぐ関係)をあらわします。
例文Eについて考えると、「眠い」ということに対して「眠れない」という反対のことが後にきてつながっていますが、「のに」はそのような逆接の関係をあらわしています。
[スポンサードリンク]
次の各文の下線部の説明としてあてはまるものを、後のアからエのなかから選んで、記号で答えなさい。
(1) 彼らは、危機に直面した。
(2) 早起きしたのに、遅刻した。
(3) ついにその日がやってきた。
(4) 道を親切に教えてくれた。
ア.形容動詞の連用形活用語尾
イ.副詞の一部
ウ.格助詞「に」
エ.接続助詞「のに」の一部
【考え方】
「に」を識別するときには、次の2点に着目します。
まず、「に」を含む語句の「に」を「だ」や「な」に置きかえてみて自然になるかどうか、すなわち、活用があるかないかを考えます。
置きかえることができるのであれば形容動詞の連用形の活用語尾、できないのであれば副詞や助詞(の一部)です。
設問の四つの文のうち、「に」を「だ」や「な」に置きかえることができるのは、(4)だけです。((2)は、「な」に置きかえることができません。)
ちなみに、設問文にはありませんが、助動詞「そうだ」「ようだ」も形容動詞と同じ活用をします。たとえば、「おいしそうだ」→「おいしそうに食べる」「おいしそうな食事」というように。
助動詞「そうだ」「ようだ」は、形容動詞とまぎらわしい語ですが、「そうに」「ように」の形は助動詞であると覚えてしまいましょう。
*
次に、「に」の直前の部分に注目します。
「に」の直前が体言(名詞)であれば、格助詞です。
「に」の直前が「の」で、逆接の関係(反対のことがらをつなげる関係)をあらしているのであれば、接続助詞「のに」の一部です。
それ以外の「に」は、副詞の一部です。
(1)の「に」は、直前が「危機」という名詞だから、格助詞です。
(2)の「に」は、直前が「の」であり、「早起きした」ことと「遅刻した」こととは逆接の関係にあるから、接続助詞の一部です。
(3)の「に」は、直前が体言でも「の」でもないから、副詞の一部です。
【答】
(1) ウ
(2) エ
(3) イ
(4) ア