■ 助動詞「せる・させる」
(1) 意味
使役 … 他になにかの動作をさせる。
(例) メンバーを集まらせる。
(例) キャプテンにメンバーを集めさせる。
(2) 活用
動詞(下一段活用)型
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
せる | せ | せ | せる | せる | せれ |
せろ せよ |
させる | させ | させ | させる | させる | させれ |
させろ させよ |
(3) 接続
「せる」「させる」は、ともに動詞の未然形に付く。
せる :五段・サ変動詞の未然形に付く。
(例) 知らせる 努力させる
させる:上一段・下一段・カ変動詞の未然形に付く。
(例) 感じさせる 受けさせる 来させる
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助動詞「せる・させる」の意味・活用・接続を見ていきましょう。
「せる」と「させる」は、どちらも意味と活用が同じですが、接続のしかたが違います。
まずは次の例文を見てください。
【A】メンバーが 集まる。
【B】キャプテンが メンバーを 集まらせる。
Aの文は、「メンバー」が「集まる」という動作をすることを表しています。
Aの文の主語は、「メンバーが」です。
Bの文は、Aの文の終わりに助動詞「せる」を加えて、さらに文全体を自然な形になるように変えたものです。
文末に「せる」が加わることによって、Aの文の主語「メンバーが」は【―を】の形の文節(修飾語)に変化しました。代わりの主語として、「キャプテンが」という文節が登場しています。
Bの文は、「キャプテン」が「メンバー」に「集まる」という動作をさせるという意味になります。
*
次の例文も見てみましょう。
【C】キャプテンが メンバーを 集める。
【D】監督が キャプテンに メンバーを 集めさせる。
Cの文の意味は、Bの文とほぼ同じです。
Cの文の終わりに助動詞「させる」を加えて自然な形に変えたのがDの文です。
今度は、主語が「キャプテンが」から「監督が」に変わり、もとの文の主語であった「キャプテンが」は【―に】の形の文節(修飾語)に変化しています。
そして、文の意味は、「監督」が「キャプテン」に「メンバーを集める」という動作をさせるという意味に変化しました。
**
以上のことから、「せる・させる」という助動詞は、他の人(または物)になにかの動作をさせるという意味を表すことがわかります。
この意味を使役といいます。「せる・させる」は、使役を表す助動詞です。
上の二つの例で見たように、「せる・させる」が文末に加わることで、主語や修飾語といった文の組み立てそのものが変わることに注意してください。
つまり、もとの文の主語【―が】が、「せる・させる」を用いた文では動作をさせる対象をあらわす文節(修飾語)【ーを】【ーに】に変化します。
・メンバーが 集まる。
→メンバーを 集まらせる。
・キャプテンが 集める。
→キャプテンに 集めさせる。
「せる・させる」という助動詞はどのように活用するのでしょうか。
例として、「行かせる」「見させる」を活用させてみます。
【行かせる】
→行かせない
→行かせます
→行かせる。
→行かせるとき
→行かせれば
→行かせろ。(行かせよ。)
【見させる】
→見させない
→見させます
→見させる 。
→見させるとき
→見させれば
→見させろ。(見させよ。)
上の例の赤字の部分だけを抜き出して活用表の形にまとめると、次のようになります。
【表】「せる・させる」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
せる | せ | せ | せる | せる | せれ |
せろ せよ |
させる | させ | させ | させる | させる | させれ |
させろ させよ |
続くことば | ナイ | マス |
(言い切る) |
トキ | バ |
(命令して言い切る) |
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この活用表を見ると、「せる」と「させる」の活用のしかたは、どちらも動詞の下一段活用と同じであることがわかります。
ただし、動詞とちがって、語幹と活用語尾の区別はありません。
このように、「せる・させる」は、動詞(下一段活用)型の活用をする助動詞です。
動詞の下一段活用を覚えてさえいれば、「せる・させる」の活用のしかたを丸暗記する必要はありません。「せる・させる」は下一段活用型とだけ覚えておきましょう。
(動詞の下一段活用については、「動詞(6)下一段活用」のページを参照してください。)
「せる・させる」は、助動詞なので、かならず他の語のあとに続けて用いられます。
では、どのような語に続くのかを次の例で考えてみましょう。
知ら せる (五段)
努力さ せる (サ変)
感じ させる (上一段)
受け させる (下一段)
来 させる (カ変)
この例で「せる」や「させる」の直前にくる赤字の語は、すべて動詞の未然形です。
このように、「せる・させる」という助動詞は、動詞の未然形に付きます。
「努力させる」という形は、「せる」と「させる」のどちらを用いているのか紛らわしいと思います。
しかし、「せる・させる」が動詞の未然形に付くことを知っていれば、「努力」(名詞)+「させる」と考えるのは間違いであることがわかります。
この場合は、「努力さ」(動詞の未然形)+「せる」と考えます。
*
もっとも、動詞の未然形であれば、「せる」と「させる」のどちらが付いてもよいというわけではありません。
たとえば、「行かせる」とすることはできますが、「行かさせる」とすることはできません。
ある動詞に「せる」と「させる」のどちらが付くかは、動詞の活用の種類によって決まります。
上の例のように、「せる」は五段活用およびサ変(サ行変格活用)の動詞の未然形に付き、「させる」は上一段活用・下一段活用・カ変(カ行変格活用)の動詞の未然形に付きます。
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次の各文を、主語を「母が」にして使役の助動詞「せる・させる」を用いた文に改めなさい。
(1) 妹が買い物に行く。
(2) 弟が窓を閉める。
【考え方】
使役の助動詞を加えて使役でない文を使役の文に変える問題です。
(1)のように使役でない文の述語が自動詞である場合は、使役の文に変えることで、もとの文の主語が【―を】の形の修飾語になります。
これに対して、(2)のように使役でない文の述語が他動詞である場合は、使役の文に変えることで、もとの文の主語が【―に】の形の修飾語になります。
なお、「行く」は五段動詞(未然形がア段の音)なので「せる」が付き、「閉める」は下一段動詞(未然形がエ段の音)なので「させる」が付くことに注意してください。
【答】
(1) 母が妹を買い物に行かせる。
(2) 母が弟に窓を閉めさせる。
*
次の各文中から使役の助動詞を探し出して、その活用形を答えなさい。
(1) 子どもを道路で遊ばせない。
(2) 父は、子に面白い話を聞かせた。
(3) ずっと練習させれば、うまくなる。
(4) もっと野菜を食べさせろ。
【考え方】
各文中の動詞の直後にある「せ」「させ」が使役の助動詞(の一部)です。
それがわかれば、あとは文中での用法(続く語)から活用形を考えていきます。
「せる・させる」は動詞の下一段型の活用をしますから、その活用形と用法については下一段動詞の場合と同じように考えましょう。
(1)のように「ない」が付くのは未然形、(2)のように「た」が付くのは連用形、(3)のように「ば」が付くのは仮定形、(4)のように命令して言い切るのは命令形です。
【答】
(1) 未然形
(2) 連用形
(3) 仮定形
(4) 命令形
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次の各文中の( )に、「せる」か「させる」のいずれかを適当な活用形にして当てはめなさい。
(1) 先生が生徒に文法を学ば( )。
(2) あなたにケーキを食べ( )てあげたい。
(3) 彼をここに来( )ばよい。
(4) かわいい子には旅をさ( )。
【考え方】
「せる」も「させる」も、どちらも動詞の未然形に付きます。ただし、「せる」は五段・サ変動詞に付き、「させる」は上一段・下一段・カ変動詞に付きます。
(1)から(4)の文中にある( )の直前の動詞はすべて未然形ですが、それぞれ活用の種類がちがいます。
まず、動詞の活用の種類から考えて「せる」と「させる」のいずれが来るかを判断します。
その次に、( )の直後や文全体の意味に注目してその用法に当てはまる活用形を考えましょう。
動詞の活用の種類の見分け方については、「用言の活用まとめ」のページを参考にしてください。
【答】
(1) せる
(2) させ
(3) させれ
(4) せろ(せよ)