■ 助動詞「らしい」
(1) 意味
推定 … なんらかの根拠にもとづいて推しはかる。
(例) この絵画は、本物らしい。
(2) 活用
形容詞型
未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
○ |
らしかっ らしく |
らしい | らしい | らしけれ | ○ |
(3) 接続
「らしい」は、動詞・形容詞・一部の助動詞の終止形のほか、形容動詞の語幹、体言、一部の助詞にも接続する。
(例) 遊ぶらしい 高いらしい 知らせるらしい
(例) にぎやからしい 工事らしい それかららしい
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助動詞「らしい」の意味・活用・接続を見ていきましょう。
次の例文を見てください。
この 絵画は、本物らしい。
文末に「らしい」が付くことによって、はっきりそうであるとは断言できないが、おそらくそうだろうと想像する(推しはかる)という意味になっています。
もっとも、「らしい」は、単なる推量ではなく、なんらかの根拠にもとづいて推しはかることを意味します。(例文でいえば、たとえば専門家のお墨付きがあることなど。)
このように、なんらかの根拠にもとづいて推しはかることを推定といいます。
「らしい」は、推定の意味をもつ助動詞です。ほかに推定の意味をもつ助動詞として、「ようだ」があります。
助動詞の「らしい」がどのように活用するのかを見てみましょう。
例として、「来るらしい」を活用させてみます。
【来るらしい】
→来るらしかった
→来るらしく
→来るらしい。
→来るらしいとき
→来るらしければ
この例の赤字部分だけを抜き出して活用表をつくると、次のようになります。
【表】「らしい」の活用表
基本形 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
らしい | ○ |
らしかっ らしく |
らしい | らしい | らしけれ | ○ |
続くことば |
タ (中止法) |
(言い切る) |
トキ | バ |
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この活用のしかたは、未然形がないのを除けば、形容詞の活用のしかたと同じです。
このように、「らしい」は、形容詞型の活用をする助動詞です。もっとも、形容詞とちがって、語幹と活用語尾の区別はありません。
(形容詞の活用については、「形容詞(2)活用」のページを参照してください。)
なお、上の活用表にある連用形「らしく」の中止法というのは、文を「らしく」の直後でいったん中止して、またすぐに続けるような表現の方法をいいます。
次の例文を参考にしてください。
彼は 疲れて いるらしく、無言で 立ち去った。
「らしい」という助動詞がどのような語のあとに続くのかを見てみましょう。
まずは、次の例から。
遊ぶ らしい
高い らしい
知ら せる らしい
見 させる らしい
言わ れる らしい
食べ られる らしい
行き たがる らしい
知ら ない らしい
行き たい らしい
知ら ぬ らしい
死ん だ らしい
この例の赤字の部分は、動詞・形容詞と一部の助動詞です。これらは、すべて終止形であると考えてください。
このように、「らしい」は、動詞・形容詞および一部の助動詞の終止形に付きます。
*
別の例を見てみましょう。
にぎやか らしい
工事 らしい
それ から らしい
「にぎやか」は形容動詞「にぎやかだ」の語幹、「工事」は体言(名詞)です。
最後の「から」は助詞です。「らしい」が接続する助詞として、「から」のほかに「の」「ばかり」などがあります。
このように、「らしい」は、形容動詞の語幹や体言、一部の助詞にも付きます。
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次の文の下線部「らしい」と文法的に同じものを、①から③の文の中から選んで答えなさい。
この土地にマンションが建つらしい。
① 学生なので、学生らしい服装をしましょう。
② この子犬は、小さくてかわいらしい。
③ 彼女は、去年結婚したらしい。
【考え方】
「らしい」の品詞を見分ける問題です。
「らしい」ということばは、助動詞であるとはかぎりません。形容詞の一部である場合もあります。
ある文中の「らしい」がそれらのいずれであるかは、文中にことばを付け加えたり、言いかえたりすることによって見分けることができます。
例文や③のように、「どうやら」あるいは「どうも」といったことばを付け加えても文の意味が変わらなければ、(推定の)助動詞です。
また、①のように、「いかにも」を付け加えたり、「~にふさわしい」と言いかえたりすることができるときは、形容詞の接尾語です。
②の「かわいらしい」のように、語の形に「らしい」を含む形容詞もあります。
同じように語形に「らしい」を含む形容詞として、「すばらしい」「めずらしい」「いやらしい」などがあります。
【答】
③
*
次の各文中の( )に当てはまるように助動詞「らしい」を適当な形に直して答えなさい。
(1) 彼女は、お腹が痛い( )た。
(2) 犯人( )人物を見かけたら、警察に通報しましょう。
(3) からだによい( )から、毎日飲んでいます。
(4) 風邪をひいた( )、学校に来なかった。
【考え方】
「らしい」は形容詞型の活用をするので、形容詞の活用のしかたを思い出せば、「らしい」の活用形もわかります。ただし、未然形はありません。
(1)は、( )の直後の助動詞「た」が連用形に接続するので、連用形の「らしかっ」が当てはまります。
(2)は、( )の直後に名詞(人物)が来るので、連体形の「らしい」が当てはまります。
(3)は、( )の直後の助詞「から」が終止形に接続するので、終止形の「らしい」が当てはまります。
(3)の「らしい」については、終止形と連体形のどちらかで迷うかと思います。
「から」がどのような活用形に接続する語なのかを知らなかったときは、もし形容動詞であったとしらどの活用形がそれに連なるのかを考えるとよいでしょう。
「元気だから」(終止形)とは言えますが、「元気なから」(連体形)とは言えません。したがって、「から」は終止形接続であることがわかります。
(4)は、( )の直後で文がいったん切れています。これを中止法といいます。
中止法の場合には、連用形の「らしく」が用いられます。
【答】
(1) らしかっ
(2) らしい
(3) らしい
(4) らしく