■ 助動詞の性質
助動詞は、付属語で活用がある単語である。
① 付属語 … かならず他の語のあとに付く。
(例) 食べられる 起きない
② 活用がある単語 … 文中での用法によって形が変化する。
(例) 食べられない 食べられるとき 食べられれば …
■ 助動詞の働き
助動詞は、いろいろな語に付いてさまざまな意味をそえる働きをする。
(例) 咲か ない 咲い た
■ 助動詞の3要素
助動詞の意味・活用・接続をまとめて助動詞の3要素という。
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助動詞は、品詞の一つです。品詞についてはすでに、「単語の分類(3)品詞の分類」のページでさまざまな品詞の性質についてふれました。
ここであらためて、助動詞の性質について確認しておきましょう。
助動詞は、付属語で活用がある単語です。少しくわしく見ましょう。
(1) 助動詞は付属語である
付属語とは、それだけでは文節をつくることができず、かならず他の語のあとに続けて用いられる単語をいいます。
助動詞も、この付属語の仲間ですから、かならず他の語のあとに続けて用いられます。
次の例の赤字部分が助動詞です。
食べ られる
起き ない
飲み たい
来る らしい
*
助動詞が具体的にどのような語のあとに付くのかは、個々の助動詞によってちがいます。
たとえば、「よう」という助動詞は動詞などの未然形に付き、「です」という助動詞は名詞などに付くと決まっています。
どの助動詞がどのような品詞や活用形の語に付くのかは、一つひとつの助動詞ごとに覚えるしかありません。(「助動詞活用表」のページで一覧することができます。)
なお、助動詞が付くのは動詞や名詞などの自立語だけであるとはかぎりません。付属語、すなわち他の助動詞や助詞に付く場合もあります。
(自立語と付属語については、「単語の分類(1)自立語と付属語」のページを参照してください。)
勉強し よう
秋田犬 です
来 ない だろ う
見る だけ です
(2) 助動詞は活用がある単語である
助動詞は、文中での用法(文がそこで切れるか続くか、どんな語がそのあとに続くか)によってその形が変化します。つまり、助動詞は活用がある単語です。
そして、助動詞にも、未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形といった活用形があります。
(単語の活用については、「単語の分類(2)単語の活用」のページを参照してください。)
食べ られ ない (未然形)
食べ られ た (連用形)
食べ られる 。 (終止形)
食べ られる とき(連体形)
食べ られれ ば (仮定形)
食べ られろ 。 (命令形)
*
助動詞は活用がある単語ですが、すべての助動詞が同じような活用のしかたをするわけではありません。助動詞の活用のしかたは、個々の助動詞によってちがいます。
そうは言っても、助動詞の活用のしかたは、動詞型や形容詞型・形容動詞型などのように、いくつかのタイプに分類することができます。
この点についてくわしくは、「助動詞の分類」のページを参照してください。
**
なお、助動詞は活用がある単語ですが、同じく活用がある単語である動詞・形容詞・形容動詞とはちがって、語幹と活用語尾の区別がありません。
(語幹と活用語尾については、「動詞(2)活用とその種類」のページを参照してください。)
助動詞は、文中でどのような働きをする単語なのでしょうか。
次の例文をもとにして考えてみましょう。
【A】花が 咲く。
【B】花が 咲かない。
【C】花が 咲いた。
Aの文には、助動詞がありません。この文を基礎にして、BやCの文の意味を考えてみます。
まず、Bの文からです。
Bの文は、Aの文の述語「咲く」に「ない」という助動詞が加わったものです。
Aの文の意味とBの文の意味をくらべてみると、Bの文は、「咲く」ことに対して、そうでないと否定している意味であることがわかります。
つまり、助動詞の「ない」には、それが付く語または文の意味内容を否定する(打ち消す)働きがあります。
次に、Cの文です。
Cの文は、Aの文の述語「咲く」に「た」という助動詞が加わったものです。
Aの文の意味とCの文の意味をくらべてみます。
Aの文のように、単に「咲く」だけだと、ふつうは現在あるいは未来のことについて述べている意味になります。
これに対して、Cの文のように、「咲いた」となると、過去のことについて述べている意味になります。
つまり、助動詞の「た」には、それが付く語または文の意味内容が過去のものであることを表す働きがあります。
*
以上の例から、助動詞には、動詞などのいろいろな語に付いて、打ち消しや過去といったさまざまな意味をそえる(付け加える)働きがある、ということがわかります。
助動詞がどのような意味を持つかは、個々の助動詞によってちがいます。
一つの助動詞が一つの意味しか持たないとはかぎりません。二つ以上の意味を持つ助動詞もあります。
(助動詞の意味については、「助動詞活用表」のページで一覧することができます。)
上の例で見たように、助動詞というのは、動詞などの述語をつくる働きがある語のあとに続いて、いっしょに述語をつくることが多い単語です。
そして、助動詞をふくむ述語の文節が文の終わりの文節であるときは、助動詞の意味によって文全体の意味が変化します。
このように、助動詞は付属語ですが、文の中で重要な働きをする単語です。
これまでに述べてきたことを整理すると、助動詞という単語には、次の三つの特徴があることがわかります。
① 他の語のあとに続く(接続する)。
② 活用がある。
③ 意味をそえる働きをする。
これら三つの特徴が一つひとつの助動詞を理解するための重要なポイントになります。
つまり、個々の助動詞ごとに、どのような意味をもつか、どのように活用するか、どのような語に接続するかをこれから学んでいくわけです。
助動詞の意味・活用・接続をまとめて助動詞の3要素と呼びます。
助動詞は、意味・活用・接続の三つの要素に着目する。
助動詞はこれら三つの要素によって分類することができますが、それについてくわしくは「助動詞の分類」のページを参照してください。
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次の各文中から助動詞を一つずつ抜き出して答えなさい。
(1) 彼は、親切な人といつも言われる。
(2) ペットに水を飲ませる。
(3) 犬が散歩に行きたがる。
(4) 今日こそは、がんばって勉強しよう。
(5) かぜをひいたので、病院へ行く。
(6) 他人が嫌がることをしないと決心する。
(7) 今日は、私の誕生日です。
(8) この家は、どうやら空き家らしい。
【考え方】
助動詞と呼ばれる単語は、「せる・させる・れる・られる・ない・ぬ(ん)・う・よう・まい・たい・たがる・た(だ)・そうだ・ようだ・らしい・ます・だ・です」にかぎられます。(「助動詞活用表」を参照。)
まずは、これらの助動詞をすべて覚えるようにしましょう。
そのうえで、問題の各文の中から助動詞を探してみてください。
本問では、助動詞の基本形さえ知っていれば、文中の語のどれが助動詞であるかを探し出せるようにしてあります。
【答】
(1) れる
(2) せる
(3) たがる
(4) よう
(5) た
(6) ない
(7) です
(8) らしい
*
次の各文中の下線部はすべて助動詞である。それぞれの意味をあとから選んで記号で答えなさい。
(1) 窓から空の雲を眺めていた。
(2) 大きな商談が成立したらしい。
(3) 雨が降らねば、植物は育たない。
(4) また会いたいときに来てください。
ア 推定
イ 打ち消し
ウ 過去
エ 希望
【考え方】
一つひとつの助動詞は意味を持っていて、どの助動詞がどのような意味を表すのかをしっかりと覚える必要があります。
一つの助動詞が二つ以上の意味を持つ場合は、そのうちのどの意味が適当であるかを文の意味から考えて判断します。
(1)の文の「た」は、過去の意味を表す助動詞(過去の助動詞)です。「た」には、過去のほかに完了、存続といった意味もあります。
(2)の文の「らしい」は、推定の意味を表す助動詞(推定の助動詞)です。
(3)の文の「ない」は、打ち消し(否定)の意味を表す助動詞(打ち消しの助動詞)です。
(4)の文の「たい」は、希望の意味を表す助動詞(希望の助動詞)です。
【答】
(1) ウ
(2) ア
(3) イ
(4) エ
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次の各文の( )に合うように、あとの助動詞を適当な形に直して答えなさい。
(1) この服は、小さすぎて着( )ない。[られる]
(2) 彼は、いつも面白い話を聞か( )てくれる。[せる]
(3) 急が( )ば、電車に間に合わない。[ない]
(4) 名前を呼ばれて思わ( )振り向いた。[ぬ]
(5) 家に帰っ( )、誰もいなかった。[た]
(6) まるで昨日のことの( )思い出す。[ようだ]
(7) 誕生日( )ので、友達からプレゼントをもらった。[だ]
(8) 昼食をいっしょに食べ( )う。[ます]
【考え方】
助動詞は、活用がある単語です。すなわち、文中での用法によって語の形が変化します。
各文の( )の位置に[ ]で指定された助動詞が来るときに、どのような形にすればうまく当てはまるかを考えましょう。
一つひとつの助動詞がどのように活用するかについては、個々の助動詞についてこれからくわしく学んでいきます。
【答】
(1) られ
(2) せ
(3) なけれ
(4) ず
(5) たら
(6) ように
(7) な
(8) ましょ