■ 敬語とは
敬語とは、聞き手(読み手)や話題中の人に対して話し手(書き手)の敬意を表すための言葉づかいである。
(例) あなたのおっしゃるとおりです。
■ 敬語の種類
敬語は、三つの種類に分けられる。
① 尊敬語……人の動作・状態・持ち物などを高める。
(例) 召し上がる ご病気 お荷物
② 謙譲語……話し手(書き手)が自分の側の動作などをへりくだる(低くする)。
(例) 伺う 参る 私ども お願いいたす
③ 丁寧語……話し手(書き手)が言い方を丁寧にする。
(例) お席 です ます ございます
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私たちの国語(日本語)の大きな特色の一つに敬語があります。
敬語とは何か、敬語にはどのような種類があるかを見ていきましょう。
次の二つの文をくらべてみましょう。
【A】あなたの 言う とおり だ 。
【B】あなたの おっしゃる とおり です 。
Aの文もBの文も、どちらも基本的に同じ内容を表しています。
しかし、それぞれの文から受ける印象はだいぶちがいます。
たとえば、自分(話し手)が話し相手(話の聞き手)よりも目上(年齢や地位が上の人)であったり、たがいに親しい間柄であったりする場合には、Aの文のような言い方でもよいでしょう。
しかし、自分が話し相手よりも目下(年齢や地位が下の人)であったり、相手が初めて会った人であったりした場合はどうでしょうか。
常識的に考えれば、そのような場合にはAの文のような言い方では失礼であり、Bの文のような言い方をするのが適切です。
Aの文とBの文とのこのような印象のちがいは、言葉のなかに相手を敬う気持ち(敬意)がこもっているかどうかという点から生じています。
Bの文の言葉からは相手に対する敬意を感じとることができますが、Aの文の言葉からはそれができません。
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また、次の例はどうでしょうか。
【C】先生に 言っ たことを君にも話そう。
【D】先生に 申し上げ たことを君にも話そう。
これら二つの例文のちがいも、前の例と同じように、敬意を感じとることができるかどうかという点にあります。
Dの文には敬意のこもった語がふくまれていますが(「申し上げ」)、Cの文にはありません。
ただし、Bの文とはちがって、敬意を向けている人は目の前にいる話し相手(話の聞き手)ではありません。
話し手の敬意は、「先生」という話題にしている人に対して向けられています。
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以上述べたように、私たちの日常生活のなかでは、相手や場面にふさわしいように敬意を表す言葉づかいをすることが多くあります。
話の聞き手(読み手)や話題中の人に対して話し手(書き手)の敬意を表すための言葉づかいを敬語といいます。
敬語は、日本社会で生活する私たちが他人とのコミュニケーションを円滑(スムーズ)に行うために欠かすことのできない重要な言葉です。
敬語をまったく使わなかったり、うまく使えなかったりすると、周囲の人たちに失礼な印象を与えたり、自分の常識や人間性が疑われたりすることになりかねません。
敬語ではありませんが、敬語とよく似た言葉に改まり語と呼ばれるものがあります。
同じことを言うにしても、たとえば次のように言い方を変えたほうが、改まった印象を相手に与えることができます。
・こっち → こちら
・きょう → 本日
・さっき → 先ほど
・よい → よろしい
・ちょっと → 少々
敬語を使うときには、改まり語もいっしょに使用するようにしましょう。
敬語は、人に対する敬意(敬う気持ち)を表す言葉です。
そして敬語は、敬意の表し方によって尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つの種類に分けることができます。
(1) 尊敬語
ある人の動作・状態・持ち物などを高めることでその人に敬意を表す言葉を尊敬語といいます。
あの方は、何でも 召し上がる 。
先生が ご病気 だと聞いておどろいた。
お荷物 をお預かりします。
上の例の「召し上がる」「ご病気」「お荷物」が尊敬語です。
尊敬語については、「尊敬語」のページでくわしく解説します。
(2) 謙譲語
話し手(書き手)が自分や自分の側の人の動作などをへりくだる(低める)ことで、話の聞き手(読み手)や話題中の人に敬意を表す言葉を謙譲語といいます。
先生のご自宅に 伺う つもりだ。
明日、東京へ 参り ます。
私ども から お願いいたし ます。
上の例の「伺う」「参り」「私ども」「お願いいたし(お願いいたす)」が謙譲語です。
尊敬語と謙譲語とのちがいは、尊敬語が直接的にある人を高めるのに対して、謙譲語は自分側を低くすることで間接的にある人を高めるという点にあります。
謙譲語については、「謙譲語」のページでくわしく解説します。
(3) 丁寧語
話し手(書き手)が言い方を丁寧にすることで話の聞き手(読み手)への敬意を表す言葉を丁寧語といいます。
これが私の作品 です 。
駅前へ買い物に行き ます 。
あちらに お席 が ございます 。
上の例の「です」「ます」「お席」「ございます」が丁寧語です。
丁寧語については、「丁寧語」のページでくわしく解説します。
敬語を分類する方法には、上の3種類に分ける方法のほかにも、4種類あるいは5種類に分ける方法もあります。
3種類のうちの丁寧語を丁寧語と美化語の二つに分けると4種類になり、さらに謙譲語を謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)とに分けると5種類になります。
5種類 | 4種類 | 3種類 |
尊敬語 |
尊敬語 |
尊敬語 |
謙譲語Ⅰ |
謙譲語 |
謙譲語 |
謙譲語Ⅱ (丁重語) |
||
丁寧語 |
丁寧語 |
丁寧語 |
美化語 |
美化語 |
敬語には、尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つがある。
尊敬語は、相手の動作などを高める。
謙譲語は、自分側の動作などを低める。
丁寧語は、言い方を丁寧にする。
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次の各文に対する指摘としてもっとも適当であるものをそれぞれ後から選び、記号で答えなさい。
(1) はじめまして、あなたの名前を教えろ。
(2) 先生なら、あっちにいる。
(3) 先生、いつ家庭訪問に来るの。
(4) 質問がある人は手を挙げろ。
ア 話し相手が目上の人なので、敬語を使わないと失礼である。
イ 話題中の人物が目上の人なので、敬語を使うべきである。
ウ 初対面の相手なので、敬語を使わないと失礼である。
エ もし改まった場面であるならば、敬語を使うべきである。
【考え方】
敬語を使っていない文について、なぜ敬語を用いるべきか、その理由を考える問題です。
(1)の文は、「はじめまして」というあいさつの言葉から、会話の相手が初対面の人であることがわかります。
したがって、「教えろ」ではなく、「教えてください」などのような敬語を使った表現にするべきです。
(2)の文は「先生」という人を話題に出していますが、先生にかかわる事柄にはふつう敬語を用います。
したがって、「いる」ではなくて、「いらっしゃる」「お見えになる」のような敬語を使った表現にするべきです。
(3)の文では、話し相手が「先生」であって、話し手が「先生」の動作について述べています。
したがって、「来る」ではなくて、「いらっしゃる」「おいでになる」のような敬語を使った表現にするべきです。
(4)の文の表現が適切かどうかは、その場面によります。もし会合などの改まった場面であるとしたら、このような表現は不適切です。
敬語を使うならば、「挙げろ」ではなく、「挙げてください」や「お挙げください」のような表現になります。
【答】
(1) ウ
(2) イ
(3) ア
(4) エ
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次の文章の( )に当てはまる語を後から選び、記号で答えなさい。
「敬語には、( ① )・( ② )・( ③ )の三つの種類がある。( ① )は、ある人物の動作などを( ④ )ことでその人に敬意を表す言葉である。( ② )は、逆に、自分や身内の動作などを( ⑤ )ことで( ⑥ )や話題中の人物に敬意を表す言葉である。( ③ )は、丁寧な言い方をすることで( ⑥ )に敬意を表す言葉である。」
ア 高める
イ 謙譲語
ウ 聞き手(読み手)
エ 低める
オ 尊敬語
カ 丁寧語
【考え方】
敬語の種類についての知識を問う問題です。
敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類があって、それぞれ敬意の表し方にちがいがあります。
人の動作などを直接的に高めるのが尊敬語であり、自分側を低めることによって間接的に相手を高めるのが謙譲語です。
そして、丁寧語は、丁寧な言い方をすることで聞き手(読み手)に敬意を表します。
なお、敬意を向ける対象となる人物が聞き手なのか、それとも話題中の人物なのかを区別することも重要です。
【答】
① オ
② イ
③ カ
④ ア
⑤ エ
⑥ ウ
**
次の各文中の下線を引いた敬語の種類を後から選び、記号で答えなさい。
(1) この作品は、まだ未完成です。
(2) わたくしがそちらへ参ります。
(3) 先生は、どんな本をお読みになりますか。
(4) ご来場の皆様へご案内申しあげます。
ア 尊敬語
イ 謙譲語
ウ 丁寧語
【考え方】
敬語の種類を考えるときには、誰の動作であるか、また、誰に敬意が向けられているかといったことに注目します。
(1) 「です」は、聞き手(読み手)に対して丁寧な言い方をするときに使います。すなわち、丁寧語です。
(2) 「参り(参る)」は、聞き手に敬意を表すために、自分や身内の「行く」という動作をへりくだる(低める)ときに使う表現です。すなわち、謙譲語です。
(3) 「お(ご)~になる」という形は、その動作をする人に敬意を表すときに使う表現です。「お読みになる」は、「読む」を尊敬語にした言い方です。
(4) 「ご(お)~申し上げる」という形は、その動作をする人がへりくだるときに使う表現です。「ご案内申しあげる」は、「案内する」を謙譲語にした言い方です。
【答】
(1) ウ
(2) イ
(3) ア
(4) イ